「幻鳥譚」中川多理人形展

フライヤーに推薦文掲載。
http://www.yaso-peyotl.com/archives/2016/04/1609_nakagawatari_doll.html
 中川多理の創る人形たちを見て僕が、ごく個人的にいつも感じるのは、
あらかじめ“生”の呪縛から解放された存在の“安らぎ”である。“生”は“肉”
と云い換えても良いかもしれない。
 よけいな“肉”が削ぎ落とされた滑らかな皮膚。それがところどころで骨と
融け合って一体化したり、風化して剥き出しの骨だけになったりもしながら、
結果として本来“死”の側に属するものたちの空洞に、あるはずのない仄
かな“生”が宿る。このありようが実に美しく蠱惑的で、なおかつ不思議な
“安らぎ”を見る者にもたらす。──ような気がするのだ。 
 そんな中川多理の少女たちと伝説の幻鳥の共演が、今回の個展では
見られるという。そこにどんな“声”を聴き、どんな“物語”を見出すことが
できるか。──小説家の端くれとしては楽しみでならない。────綾辻行人
11日には、綾辻さんと中川多理さんとのトークイベントも開催。素敵な組み合わせです。